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Global forum On advanced Implant Dentistryレポート

「Global forum On advanced Implant Dentistry」に参加して

5-D Japanファウンダー:福西 一浩

2011年8月1日~5日、米国のニューヨークにあるニューヨーク大学にてBiomet3i 主催「Global forum On advanced Implant Dentistry」が開催された。本フォーラムは、大学の夏休みを利用したポストグラデュエートコースの一環として企画されたものである。今回で第4回目を迎え、全世界からBiomet3iシステムを用いたインプラント治療の最先端の情報を得たい歯科医師が集まり、5日間(9:00~16:00)講義を受けるといったプログラムが組まれている。今回のフォーラムでは、日本人初となる石川知弘先生と船登彰芳先生が招聘された。5-D Japanファウンダーの他のメンバー(北島 一先生、南 昌宏先生、そして著者)も聴講する機会を与えられた(図1)。ここに船登、石川両先生の6時間にもおよぶ講演内容を簡潔にまとめ、報告させていただく。

図1.ニューヨーク大学 歯学部前にて
ボストンより我々の仲間である諸井英忠先生も応援に駆け付けてくれた(左から2番目)

参加者は、全世界15か国から集まり、180名を超えるという大規模なフォーラムであり、船登、石川両先生は、その2日目にあたる8月2日の1日の講演(各3時間)を任されることとなった。講演の前日、5-D Japanのスポンサーの1社であるBIOMET 3i本社(フロリダ州パームビーチ)を訪れ、インプラント製造工場の見学、本社各部門の責任者とのミーティングの機会に恵まれた(図2)。工場では精密な製造過程や徹底した品質管理に大きな感銘を受け、日本ではまだ市場に出ていない『エンコード システム』(ヒーリングアバットメントをIOS(イントラオーラルスキャナー)を用いて採得し、従来のインプレッションコーピングを使用せずアバットメントが作成できるシステム)が実際に機能している現実に驚かされた。また、日本では未発売の「オッセオタイト2」の説明や今後の3iインプラントの将来展望などが議論され、非常に有意義な時間を過ごすことができた。

図2.フロリダ州パームビーチにあるBIOMET 3i本社にて

講演は、船登、石川両先生が午前・午後ともに交代で進めるといった形がとられた。最初に登壇した船登先生の講演は、日本で今年3月に発生した「東日本大震災」のスライドから始まり、本題へと入っていった(図3)。船登先生の講演内容は、自らの著書である「4-Dコンセプト インプラントセラピー」に沿ったものであり、この本は、本年に英語版や中国語版も発刊され、高い評価を受けているとのことであった。午前は、最適なインプラント埋入ポジション(三次元的埋入位置)の重要性と彼らが提唱している4つ目の重要な要素である「Timing」についての詳細な解説がなされた。具体的には、1、抜歯の時期、2、歯槽堤を保存するか、増大するかの指標とその時期、3、インプラント埋入時期(即時、早期、待時)、4、アバットメントの接合、二次手術の時期、5、ティッシュスカルプティングの時期、期間、6、最終補綴物の装着時期、の6つの処置のタイミングを考慮することが非常に重要であるとしたうえで、それぞれの項目に対して臨床例を挙げながら考察が行われた。
そして、歯槽堤保存に関してポンティック部への新たなアプローチ法の解説から石川先生の登壇となった(図4)。2007年にチームアトランタのDr.モーリスやDr.ガーバーらと執筆した論文「Advantages of the root submergence technique for pontic site development in esthetic implant therapy 」を挙げ、”ルート サブマージェンス テクニック”についての説明がなされた。本テクニックは、主として審美インプラント治療の計画上、支台歯として利用はできないが、保存可能な天然歯の歯根をあえて軟組織下に埋入することで、抜歯する場合と比較し、より多くの周囲組織を保存することが可能となり、高位に歯間乳頭を位置できる処置である。その後、多くの組織が失われた部位においてインプラント治療を成功させるためには、硬組織と軟組織のマネージメントが不可欠であることを強調し、歯槽堤増大時に獲得したい水平的・垂直的な高さのゴールを明確に決定することの必要性を訴えた。水平的なゴールには2つあり、1、プラットフォームのレベルで唇側に2mm以上の骨幅の確保、2、唇側の骨縁はインプラントの長軸に対してクラウンマージンと同等かそれより唇側に存在しなければならない、ことが述べられた。また、垂直的なゴールでは、1、上唇の位置、2、コンタクトポイントの位置(IHB)、3、健全な隣接面の骨頂を結んだライン、4、インプラントのプラットフォームの位置、が重要であり、とくに審美領域での前歯部インプラントではこれらの項目を十分に考慮しなければならないことが示された。さらに、それらを診断し、実際にインプラントを埋入する際に威力を発揮する”ナビゲーション”システムについても症例を挙げ、その有効性についての説明がなされた。このように午前中の3時間の講演が終了した後、昼食に入った。

図4.講演中の船登彰芳先生

図4.講演中の石川知弘先生

午後からは、GBRを伴ったインプラント埋入テクニックを二人の先生が交互にステップバイステップで解説していく形で進められた。とくに、GBRでは、チタンメッシュを用いた術式が詳細に解説された。今まで、TRメンブレンを使用することで三次元的に増大された骨が長期的に機能と審美性を維持することができたとしたうえで、非吸収性膜の欠点を補うため、現在では、コラーゲン膜とチタンメッシュを応用したGBRが良好な結果を生んでいることを力説された。
船登先生よりビデオを交えたGBRの一般的なテクニックの解説が行われた後、石川先生よりチタンメッシュを応用するためのポイントを多くの症例を通して解説がなされた。さらに、軟組織のマネージメントの重要性、つまり、どのような処置がどのタイミングで必要であるかが詳細に示された。主な処置法としては、大きく8つのテクニックがある中、ロール法、Laterally positioned flap(buccal positioned flap)、そして interpositional graftを取り上げ、臨床例とともに説明を加えた。最後に、4-Dコンセプトに則り、各処置のタイミングを考慮して、咬合崩壊をきたした全顎的な症例や前歯部重度垂直的骨欠損症例を機能的、審美的に再建し、長期間にわたり良好な予後を認めている数々の症例を供覧して1日の講演が終了した。

講演後も聴講されていた先生方から多くの質問が寄せられ、画期的なディスカッションが行われた。それらの中には、日本からニューヨーク大学に留学されている先生方や現在、補綴学教室のAssistant Professorであられる山野精一先生もおられ、それぞれに絶賛の声をいただいたことは船登、石川先生にとって大きな誇りになったことと思う。講義終了後、山野先生のお計らいにより、ニューヨーク大学の各科を見学することができ、非常に有意義な体験ができたことを最後に申し添えたい。