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EAEDレポート

アリーナデンタルクリニック 山中浩明

 今年で4回目の参加となるEAED(ヨーロッパ審美歯科学会)は、5月28日から29日の日程でギリシャ/アテネにて開催された。
 
 今年は船登、石川、北島のファウンダー3名と鈴木、中川、神津、海谷、山中のメンバー5名、村田のオブザーバー、合計9名での参加であった。

 ここ4年間はトルコ2回、ギリシャ2回での開催であったので、エアはいつもの成田発トルコ航空であり、出発前に南ウイングの鮨やで結団式で散々飲み搭乗、11時間のフライトで乗換地のイスタンブールに到着。 
休む時間もなく続けて、約1時間半のフライトでアテネの到着したのは現地時間同日夜20:50  日本時間の翌日02:50であるから、朝家を出てから22時間くらい経過しており、毎年ぐったり疲れてしまう。

ホテルにチェックイン後、屋上のプールサイドのバーで1杯ずつ飲むも全員お疲れで、ローマ経由の2時間遅れで到着する神津、海谷組の到着を待たずしてダウン。

翌日EAED初日 ホテルから会場であるヒルトンホテルまでタクシーに分乗して約10分。
タクシーに乗ると、その国のモラルがよくわかるが特にボラれることもなく、おつりも渡してくれる。ギリシャは思っている程荒れていないのかも?
会場までの街中の様子は、暴動のあった名残からかビルには落書きが多く、空いているテナントも多く目立つが、地中海性気候特有の晴れ渡った空と乾いた空気のせいで、何となく明るい気分になってしまう。

 早く会場に着けたおかげで、机のある席をキープでき万全の状態で8:45ミーティング開始。
今回のテーマは”CONTEXTUALISM in Esthetic Dentistry “
『審美治療における関連づけられた正当な見解』とでも訳すのであろうか?
すべての治療行為がそれぞれ独立して行なわれるのではなく、結びついた結果として審美が確立されるという認識を確立するのが目的であるようだ。

 Dr.Bichachoがモデレーターを務めたセッション1は、Dr.Galipが患者それぞれの骨格的特徴、固有歯列などに起因するスマイルを比較検討し、示してくれた。
Dr.Galipはトルコのみならずヨーロッパの審美補綴の重鎮で、AACD,EAEJの監修もしている。
またNYUの客員教授を兼任していることから、ご存知のかたも多いだろう。
筆者は彼の著書の”Porcelain Laminate Veneers “を愛読している。
また、彼はIzmilの大会では大会長自らGalaパーティでDJをするなど、多才なナイスガイである。

 1日目で筆者が一番興味をもったのは、イランのDr.Fereidonnによる”CRANIOFACIAL GROWTH AND IMPLANT ESTHETICS “であった。
頭蓋顔面の成長期だったり、歯の交換期にある年齢の患者に対するインプラント治療を勧められていないのは周知の事であるが、成人におけるインプラント治療でも同じ様に『変化』が見られる事を症例を通して示してくれた。
リモデリングだけではなく、部位によっては骨欠損やひびが修復されるのと同じ原理で、成長もあるのだということを報告した。
現在成人のインプラント治療計画において、成長は考慮されていないと言ってよいだろう。
最近では、インプラントと天然歯が経年的に不調和をきたすことがあることは認識されてきている。彼は今後のインプラント治療に新たに考慮すべき事項を示したと言ってよいだろう。
会場からは共感する者が多いためか、しばらく拍手が鳴り止まなかった。

 EAEDは2010年のレポートにもあるように、鈴木、中川、神津の3名が参加したことからスタートし、翌年から筆者も参加し毎年欠かさず参加している。
もともとヨーロッパのクローズの学会であるため、アジアからの参加者は稀であることから、毎年参加する我々は自然と名前と顔が覚えられている。
世界の大御所といわれているDr.とも気さくに一歯医者同士として会話できるのは、EAEDの醍醐味であり、おおきなチャンスでもある。
初日から多くの友人との再会もあり、とても楽しく一日を終えた。

 セッション終了後、アクロポリス博物館へ案内されガイドつきで説明を受けるも5-Dメンバーは全く興味を示さず、welcome partyの会場で誰よりも早く飲み始めたのであった。

2日目は、インプラントと補綴との関係、デジタル化、プロビジョナルの重要性、フレームワークなどのラボサイドとの連携、マテリアルの特性などのセッションがあったが、特に目新しいものはなかった。

 この日は、会場から70kmほど離れた半島の先端のアッテカまでバスで移動し、BBQディナーであった。
ディナーの前に古代ギリシャの海の神ポセイドンの寺院を見学し、3方がエーゲ海に囲まれた場所でサンセットを見る事ができた。
 最終日、咬合の再構成を含めた治療のセッションがあり、最後は2名のクリニシャンによる実際の治療計画の妥当性について会場全員でディスカッションするというとても内容の濃いセッションであった。
1人目のイタリアのDr.Mintroneは臼歯部咬合を失い、上顎前歯部もGBRが必要なフィクスチャーの埋入ケースであり、まさに石川先生の得意なケースであった。
ケースはそつなく完成に至っていたが、驚いたのは会場の発言の活発さであった。
質問等の挙手が収まらず白熱するのは、日本の学会とは全く異なるものであった。
質問側は率直に何でも質問し、答える側も真摯に回答していた。
途中、EAED重鎮Dr.BichachoとモデレーターのDr.Markusとかアバットメントのマイクロムーブメントを巡りメーカーの代理戦争のようになった時は笑ってしまった。
それくらい、率直に何でも発言できる学会はすばらしいと思う。

終了後、世界の石川先生が『ヨーロッパは射程範囲内だね‥』とポツリとつぶやいたのは聞き逃していない。

 すべてのセッション終了後に、アテネ郊外の古い農場を会場としたGalaディナーがあり、全員タキシードとカクテルドレスで参加しなくてはならない。
 日本人にとっては年に1度のタキシード着用の場である。
カフスを忘れてホテルで購入した中川、同じく忘れてクリーニング店の青いプラスチックのカフスをした鈴木など小さなトラブルはあったものの、今回のメインミッションであった鈴木、神津両氏のアフェリエイト授与が行なわれ、日本人初の快挙で感激した。

 感激したのもつかの間、神津が仕込んでいない訳はなく、褌は自粛し今回は日の丸鉢巻きと赤いサングラスで会場中を席巻し、お立ち台に上がってYMCAを先導して踊るのだった。
『世界のさとし』になった瞬間だった。

世界の一流のDr.は仕事は勿論だが、遊びの時間の過ごし方が実にパワフルでしかもスマートだといつも実感する。私たち日本人歯科医師も見習いたい。

 翌日、例年なら早い便で帰路につくのだが今年は夜の便にして、半日アテネ観光をした。
最初にリガヴィトスの丘にロープウェイで上り、アテネ市内を一望しカフェで一服。
その後、アテナイのアクロポリスを見学し2千年の時間を経て現存するパルテノン神殿やエレクテイオン神殿などスケールの大きさに圧倒された。
ギリシア最後は、日本レストラン『風林火山』でと全員一致で向かい、食事を堪能した。
ギリシャの食事は、どれも味付けがもの足りず2日目に訪れたこのレストランを皆絶賛していたのである。

今回も弾丸ツアーであったが、来年のEAEDはフィレンツェで開催されイタリアの友人が多い筆者たちにとってはとても魅力的な大会になるはずである。
  海外での学会は、臨床的なスキルアップは当然の事であるが、自分の立ち位置の確認、そしてなにより語学力アップのためには書かす事のできない刺激であると実感した。
 これからも機会があれば積極的に海外に出て行きたいと強く重い、今回のレポートを終了する。