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セッション・レポート

「5-D Japan 特別講演会」

石川 亮

北島一先生はまず、骨欠損を形態別に分類され、それぞれについてザ・クインテッセンス掲載症例も含め具体的に解説された。Misch.Kの論文を引用し再生療法の術前のみならず術後評価にもCBCTが有効であることを説き、骨を再生させるために再生療法以外の方法も適切に用いて治療を成功裡に導く必要があることなどを述べられた。
石川知弘先生は船登・北島両先生と共著で、今年PRDに発表される論文データをもとに、垂直GBRにおけるチタンメッシュと吸収性メンブレン、rh-PDGFの効果について紹介された。マルチセンタースタディの後ろ向き研究で、ヒト組織像を伴う価値の高い研究だった。

Ueli Grunderはまず、科学的根拠に基づく意思決定のために臨床家が最も重視すべきは、論文によるエビデンスでも、臨床経験でもなく、患者にとっての利益であると述べられた。その後Grunder先生が日常臨床で使用しているというフローチャートに則り、いくつかの症例を提示された。

フローチャート自体は、緊急処置後に基礎資料を収集し、診断、初期治療、再評価へと流れていくオーソドックスなものだったが、繰り返し述べられたのは、どの段階でも患者の希望は何かをつねに考えなさいということだった。本論とは直接関係ないが筆者が感銘を受けたのは、口腔内写真の記録としての正確性の素晴らしさである。やはり基本的なことが当たり前にできてこそ、アドバンスの治療が可能になるという好例だろう。筆者の日常臨床ではわれわれ専門医の責任として、いわゆる”Ideal treatment plan”を立案している。患者にとってのIdeal treatment planというものも存在し、それは必ずしもCompromise treatment planではないのかもしれないと考えた。

ただ、専門的知識を持たぬ患者に迎合することないよう、どのようにバランスをとっているのか?初期治療では欠損はまず可撤式義歯で対応するとコメントされていたが、咬合再構成を伴うケースで早期に臼歯の強固な支持を必要とする場合の対応など、個人的にはもっと聞いてみたいと思わせる素晴らしい講演だった。