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IDS 2011 – Internationale Dental Schau

はじめに、今回の震災で亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈りするとともに被災された方々お見舞い申し上げます。

IDS2011が3月22~26日ドイツケルンにて開催されました。2年に1度開催される世界最大のデンタルショーで、規模は昨年秋に開かれた日本デンタルショーの数倍を上回るものだと思っていただければ良いでしょう。とにかくでかく広いです。世界中から歯科関係業者が出展しておりこのタイミングで各社ともに新製品野新しいコンセプトの発表を行なっていますので、この先2年くらいの歯科の動向を読むことができるデンタルショーあるといえます。今回は未曾有の東日本における大災害の直後の開催であり、日本から参加された先生がたや、業者の方々は大変少ないようで、会場でお見かけすることはあまりありませんでした。西日本は震災の大きな影響を被ることがなかったため私はケルンに視察に行くことができましたので今回のIDSを回って感じたことをいくつかご報告させていただきたいと思います。とは言っても2日しか回ることができずほんの一部しか見ることはできませんでしたが。

 まず5-D Japanにとっての最大の情報としては船登、石川先生の4D Concept Implant Therapy 英語版がついに出版されて、クイントのブースに平積みされていたことでしょう。おめでとうございます!!しかもハードカバーで日本の装丁よりいい感じでした うれしくなって5-Dファウンダーにメールしたらすぐに船登、石川先生からも1冊ずつ買ってきてほしいと即座に返信が帰ってきたので3冊買ってそれらを持ちながらブースを回りまくったのでかなりしんどかったです。ところで私が3冊買っていたのを見たとなりにいた外国の人が、なんだろうと関心を持ってサンプルを眺めた後に買っていました!

 ここからはIDS2011の中でも私に興味のあるCAD/CAM関係を中心に報告させていただきます。
今回の特徴の一つのキーワードはintra oral scannerもしくはDigital impressionであると思います。
いくつかのブースでDigital Dentistryという文言がおおく見られました。そのなかでも口腔内の歯および歯肉の情報をデジタイズするための手段、すなわちDigital impressionを行なうためのintra oral scannerは現在市場にでているセレックAC、i-TERO、E4D、LAVA COSの4者について述べてみたいと思います。
まずセレックAC についてはご存知のように昨年夏より日本に登場したシロナの最新機種ですが今回はセレックコネクトというコンセプトを出し医院とラボ間でのインターネットによる、デジタル情報のみで模型作製やコーピング作製を行なうシステムを構築されていました。
LAVA COSは3Mのintra oral scannerで2回前のIDSでは衝撃的な先行発表されたものです。現在ではアメリカやヨーロッパですでにリリースされていて日本には近い将来お目見えすると思いますがセレックACとおなじく医院とラボ間でのインターネットによる、デジタル情報のみで模型作製やコーピング作製を行なうシステムです。今回は大幅なバージョンアップはなかったようですがある程度市場に定着して来た感を受けました。
E4D(大変セレックに類似しているアメリカのCAD/CAMで日本未発売です)については、前回の展示のおりにはブース自体壁で囲まれ関係者のみ見ることができる様な状態で、一般の見学者にはよく見ることができませんでしたが今回オープンになっていました。かなりセレックを意識した様な仕様で前回は見てびっくりしましたが、今回はあまり革新的な進化はなかったように思いました。

i-TEROはintra oral scanner専用の機種で日本では未発売ですが、ストローマンとコラボレートしたようでストローマンのブースで何回もデモンストレーションが行なわれ多くの人が立ち止まって見ていました。i-TERO自体も以前よりかなり進化が見られ、例を上げれば、パウダーレスであり、なんとセレックACのバッカルショットの様な操作により上下歯列の位置づけがされていたのはびっくりしました。欠点としてはフットペダルが複雑でCAD画面上の歯の表面の粗さが依然として粗いこと、そして一番の欠点はスキャナの大きさがかなり大きくおくまで撮るのが苦しそうでした。しかしストローマンのエトコンとのコラボでジルコニアクラウンやインプラントアバットメント等、拡張性を期待できる感じがしました。

今回の目覚ましい広がりを見せたのはやはりというか3Shapeでした。3ShapeはヨーロッパのCADソフトウエアとして有名で、すでに日本でもノリタケのKATANAやGCのAADVAシステムのCADソフトウエアなどを扱っています。今回は今までのように単なる数社のCADソフトウエア請負会社から一歩踏み出して自社でTrioという名前のintra oral scannerを打ち出してきました。このintra oral scannerもまた、パウダーレスでキャプチャーが可能でした。ヘッドは大きいですがカメラの操作がさほど難しいというものではありませんでした。インレーからジルコニアクラウン、またジルコニアアバットメントまでカバーするようです。そしてこれを、いくつかのメジャーな会社でかつCAD/CAMに現在遅れをとっている様な会社とコラボレーションされていました。たとえばヘレウスが今回Digital DentistryのワークフローとしてCARAというコンセプトを提案しており同名のCARA intra oral scannerは3Shape社Trioの OEMを採用しておりました。

またケッテンバッハ(ドイツのシリコーン印象剤の会社です)もデジタルインプレッションに入ろうとしており同じく3Shape社Trioの OEMを採用しておりました。 どうも今まで印象剤をメインにしていた会社がデジタルインプレッションに目を向け出したということでしょう。 さらに驚いたのはプランメカでした。なんと3Shape社Trioがチェアーに組み込まれたものを提案しておりました。

またドイツ国内の聞いたことのない会社でしたがやはり3Shape社Trioとコラボしていました。 私の実感では3Shape社は歯科界のマイクロソフトになろうとしているように見えてなりません。それくらいの勢いを感じました。

インプラント関連の会社では、ノーベルバイオケアはインプラントについては目新しいものは見られませんでしたが、新しいインプラント診断シミュレーションソフトのノーベルガイドのアップゲレード版であるノーベルクリニシャンを出し、それを補綴医、外科医、技工士がいわばクラウド上で操作し計画することを可能にしたノーベルコネクトを提案していました。Digital Dentistryという言葉をキーワードにしていました。 同様にBiomet3iもDigital Dentistryを中心においた展開を見せており、intra oral scanner各社とコラボしてエンコードシステム(日本未発売の特別なヒーリングアバットメントを装着させたままでDigital impressionを行ない、アバットメントをバーチャル設計し作製)を打ち出しています。技工用のスキャナではRENSHAW社のタッチプローブ方式(以前のプロセラ フォルテ)のものとコラボしていました。ちなみにここでもCADソフトウエアは3Shape社でした。

以上がintra oral scannerを中心にみた今回のIDS事情であり、今後のDigital Dentistryにおける方向性の一端が出ているものだろうと思います。そうなると次のステップ、すなわちDigital impression後のインターネットを介してのCAM,すなわちコーピング作製および模型作製をどうするかということで各社のコラボ、ネットワーキング、または独自開発が進むのだろうと考えます。 各社とも早く市場にでてデジタルワークフローを確立してDigital Dentistryでデファクトスタンダードをとろうと狙ってゆく競争になることでしょう。

ところでX線装置では関して後少し報告ですが、各社とも機種の大きなアップグレードはなく、CTとパノラマの併用機種を多くの会社が出していました。CTではNEW TOMが以前の進化版を出し、デザインが良かったです。

プランメカは、顔表面をX線データから構築し、顔面のきれいな軟組織と骨イメージの重なった像が見られました。さきのintra oral scannerを応用し近い将来必ずセレックミーツガリレオスのプランメカ版を出そうとしているように感じました。 シロナ社ではガリレオスのハードアップグレードにより顔面をカメラで多方向から撮影した画像(フェイススキャン)から構築された3DイメージをCTイメージと関連づけてスーパーインポーズしたものが発表され、矯正や顎顔面外科等の診断に応用できる様な発展性を秘めたものですごく強いインパクトを受けました。