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EAEDレポート

神津デンタルオフィス : 神津 聡

今回の学会参加は昨年の10月の国際歯科大会で休憩中のあるドクターの一言から始まっていた。「次はヨーロッパの審美の潮流を学ぼう!」
6月2日から4日までトルコのイスタンブールで開かれたEAED(European Academy of Esthetic Dentistry)に参加した。
今回は25回という記念大会。期待に胸を膨らませながらの参加となった。同行させて頂いたのは先程の一言を発したドクター、千代田区平河町開業の鈴木健造先生と八王子で開業の中川雅裕先生。この3人の珍道中となった。行きの成田空港で座席がコンフォートクラスにアップグレード出来たことも非常にラッキーであった。成田でトルコでの行動の確認をということで、寿司を頬張りながら学会での内容確認、レクチャーの内容確認をし一路トルコへ向かった。半日後、無事イスタンブールに到着し、座席のアップグレードに感謝しながら迎えのタクシーに乗り込んだ。

イスタンブールは人口約1500万人、東京都の人口とほぼ同じである。空港からのタクシーの窓からもそんな様子が伺え車、人の多さに圧倒された。タクシーは空港から約30分程のところで停まり、目の前には今回宿泊するThe House Hotel。日本で言うところの表参道と麻布十番が一緒になったような場所にそのホテルはあった。ついたのは夕方。ホテルで早速地元のトルコ料理店を教わり明日からの打ち合わせを肴に舌鼓。移動の疲れを忘れる程に楽しい宴となった。
一夜明け、学会初日。
以前、AO,AAPなどに出席経験がある筆者であるが、ブースなど非常に大きく更に数々のブースがあった。EAEDのブースはクロースドと感じさせる少ない展示ブースが会場の外の休憩エリアにあった。ブレークタイム、ランチでは各ブースを見ながら、会話をしながら一時を過ごした。会場は1カ所のみですべてのSessionがそこで行われた。

音楽と映像で引きつける開会式。その後、Esthetic dentistryのアメリカ(AAED),ヨーロッパ(EAED)の設立とその後の経過について説明があり、session1からスタートした。

Session1はデジタルvsコンベンショナルな形成、印象の現在について。Dr.IrenaはCAD/CAMを使用した補綴の方法は従来の印象ではよく見られた患者の嘔吐反射を無くし快適な環境で補綴物を提供できるという利点を述べた。
続いて登場したのはDr.Massironi。形成はテクニシャンに情報を伝える印象に直結する為に筆者も非常に重要であると考えている部分であるのでとても興味深かった。彼はプレパレーションにはタービンでなく5倍速を使用し、拡大ルーペやマイクロは必須、マージン部の最後の仕上げは回転切削は使用せず超音波チップでマージン部を仕上げることを強調していた。隣在歯との間はストリプスを入れ健全歯質の温存をはかるようにする。圧排についても適切な圧排糸をチョイスし、歯肉の厚みに応じ使用を変えることが大切であると述べた。例えば、Thinの場合はsingle code、Thickの場合はDouble code、といった具合である。そしてドクターからテクニシャンへしっかりした印象という情報を伝える為に、ドクターはマージン以下の印象材のスカートをしっかり出すこと、それを受け取ったテクニシャンはそのマージン部がぶれないようにワックスで固定し石膏の注入をすることが大切であると述べた。
Settion2ではDr.Cobiは歯肉のマネージメントについて述べた。そして補綴前の歯肉のマネージメントについて治療順番の重要性を述べ、条件があえばFinal preparationの後にCTGを行うなどの手技について述べた。矯正前の再生治療を積極的に行ない矯正、補綴、ペリオの複合的治療計画が必要であると述べた。
続くDr.NorbertoはCO2レーザーによるディストラクションやインプラントホールの形成、抜歯後のソケットに使用すると内面をフレッシュな状態にする為に抜歯即時埋入の際には有効であると述べた。
Session3では今回の学会で唯一といっていい外科についてのセッションであった。
Dr.Devorahは骨造成の分類を示し1回で造成できない事もある為にオンレーグラフトを1回行い5ヶ月後更にグラフトを行い、その後5ヶ月待ちインプラント埋入というグラフトのステージドアプローチを紹介した。アベレージで垂直的骨造成が5.6mmと言う事で10mmを造成する為に2回行うという裏づけのもと行われたものである。また再生治療、骨造成術では禁忌のスモーカーについてももちろん述べて改めて術を行う際の基本的情報収集をしっかりする事という改めて患者さんにしっかり問診する重要性を感じた。
Dr.SaschaはrhBMP-2とチタンメッシュのGBRについて述べ、GBRの変遷と平均垂直造成の高さを示し、自家骨ブロック、ゴアックス+DFDBA,自家粉砕骨+Bio-oss,rh-BMP-2とTi-meshと示し、rh-BMP-2とTi-meshが最も垂直的骨造成が出来た為にかれは今この組み合わせを使っていた。
rh-BMP-2が軟らかい為にしっかりしたスペースメーカー(Ti-mesh)を使用する事を重要と感じた。
Dr.Ueli Grunderは彼の持論で審美インプラント治療ではもう当たり前となってきているが、パピラの形態維持は骨の裏付けが必要であるというところから始まり?側の骨の量が術後の安定を決める、インプラント間の骨の維持はその横の天然歯の骨の高さに依存すると言う事が非常に重要であると述べていた。
初日のセッション後はGala-Denner.バスでイスタンブールで一番大きいモスク近くの”グランバザール”へ。
日本でいう寺院の参道がそれであり多数の商店が所狭しと乱立し、縦横無尽に広がっていた。その横にある博物館の中庭に立食ディナー、ドリンクが用意されバンドが我々をもてなしてくれた。日本での学会では考えられない外国ならではのおもてなしに改めて喜びを感じ我々も海外の知人と語り合うことが出来た。筆者としては皆さんもご存知のDr.Sascha Jovanovicと彼の奥さんにお会いでき色々お互いの情報を交換できたことが喜ばれた。先の東日本大震災、福島の原発のことなどを心配いただき”必ず復活する。私も出来る限りの事をして日本の歯科医療の一助になりたい。”と素晴らしい言葉を頂いた。

彼だけではなく、筆者が行っている”facebook”のフレンドも今回参加しており、会場に入るや否や”いつもみてるよ””日本は大丈夫か?””心配だが応援しているよ”などの本当に暖かい言葉を多数のドクター、テクニシャンから頂いた事を付け加えておきたい。
学会2日目、Session4
このセッションのテーマは”ガイデッドサージェリー vs ノンガイデッドサージェリー”
Dr.Orcanはインプラント治療には3Dシュミレーション(シンプラント)による治療計画、ガイデッドサージェリーを使用して治療を行うようにする事。ガイドが無い場合は皮質骨と海綿骨だとどうしても軟らかい部位に逃げてしまうためガイドを使用する事。ユニークだったのは垂直的骨造成をドナーサイトの真ん中にツイストドリルで穴をあけ回りをトレフィンバーで削り持って来た骨をインプラント体で固定するといった方法を行っていた事である。
Dr.Dennis Tarnowは条件があえばフラップレスでインプラント埋入を行う。またガイデッドサージェリーのサバイバルレイトが91%ということでガイドを使えばいいという事ではなく使い方、症例の見極めをしっかり行う事とマルチケースであればガイドを使う事も悪くないという考えを述べガイデッドサージェリーに警鐘をならした。
Session5は審美的補綴材料について
Dr.Amelie Mainjotはジルコニアセラミックについて述べ、ジルコニアとセラミックの界面からかける問題が起きているのでクールダウンを確実に行う事が必要であると述べている。またメタルセラミックと比較して圧力を加えると圧縮点に力がある場合引っぱり力が戻らずに内面に向かう為にそれを保証するだけのフレームワークも必要であると述べた。
Dr.Kenneth Malamentはセラミックの安定性、破折の原因としてサンドブラストの危険性を示した。また咬合調整をやめようというメッセージを残した。その為にはより精度の良い技工、補綴操作が必要であると述べた。
Session6では
Dr.Tidu Mankooは審美領域のインプラントの長期維持には条件が整えばフラップレスで、出来るだけ口蓋側に、若干の側のギャップにはBio-ossを填入し、側にはCTGを入れ歯肉の厚みを作る事が必要であると述べた。

Dr.Konrad Meyenbergは浸襲少ない方法はインプラントだけではなくアドヒーシブブリッジやピンクポーセレンを使ったボンディングでの補綴という考え方を我々に示してくれた。
Session7ではDr.Stefano GracisとDr.David de Francoの二人で矯正と補綴の専門医が骨格性Class2のケースをどのように治療して行くかを説明した。
アダルトの骨格性Class2の患者さんの場合は矯正と外科矯正を行い治療する事。
矯正のみの治療であった場合、機能、審美を得る事は出来るが骨格的食い違いを減少させる事は出来ないとしている。外科矯正をすすめた場合患者さんとよく話し、補綴を含めて治療して行くかどうか、何もしないかを天秤にかけて治療方針を決めるべき。外科矯正をしなかった場合長い治療期間がかかるがしばしば満足できる結果も手に入る場合があるとしていた。
Session8、9はscientific awards。3人のドクターが補綴のマテリアルの話を行なった。
Dr.Cristian Stappertはマテリアルについて話、インターナルコネクションでのZiアバットメントの破折の問題、クラウンとしてのZiセラミックの問題などを示した。
Session10はドクター二人が問題提起し、それについて会場中でディスカッションするというかたちをとり日本でも珍しい形の面白い講演だった。
一人はインプラント補綴のケース。もう一人は3級のケースをトリートメントしたケースでした。
優先順位をしっかり決めて処置して行くことの重要性と複合型の治療のとりくみには矯正は不可欠だと考えさせられました。
夜にはタキシードパーティーもあり、外国の先生方、技工士さんと語り合い、また来年と言う事で大いに盛り上がった。

弾丸ツアーで参加した今回だったがヨーロッパの潮流を感じ非常に充実した3日間であった。今回は日本からわずか5名という出席者であったが、講演内容を見る限り来年は今年以上に面白いと思われ参加者が増え今後のヨーロッパ、アメリカ、アジアという三位一体の歯科治療の発展が期待されるところである。来年の参加を楽しみにしつつ旅行記を締めたいと思う。