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5-D Japan2013 IFED&Dr.Cortellini研修報告

2013/9/13~2013/9/23の10日間、イタリア・フィレンツェでDr.Cortelliniに教えを請い、その後ドイツ・ミュンヘンに移りIFED World Congressに参加したので報告いたします。

はじめに
今回の研修は、IFED Pre Conference sessionで北島一先生が講演されるためその応援と、昨年石川知弘先生がAAP anual meetingで講演された際、Dr.Cortelliniに講義と手術見学を依頼し受け入れられたため、実現したものである。

Dr.Cortellini研修
イタリア・フィレンツェにあるDr.Cortelliniのオフィスへ伺い、2日間の歯周再生療法に関する研修を受けることが出来た。 初日は座学で、以下についての講義を受けた。
1.深いポケットが残存した場合の予後について・・・深いポケットが残存することで、歯周病の進行する危険度が増す
2.歯周再生療法の目標・・・最大のCAL(Clinical Attachment Level)増加と、最少の歯肉退縮
3.再生療法の3つの原則・・・Site Protection/Space/Blood clot stability
4.再生療法の術式の変遷として、PPT(Pappila Presevation Technique)
5.Microscope surgery
6.MIST(Minimal invasive surgical technique)
7.M-MIST(Modified Minimal invasive surgical technique)
彼らのグループがこれまで発表してきた臨床研究の結果は、再生量の大きさのおいて、つねにその時代のトップランクに入っている。どのようにすればそのように良好な結果を得ることが出来るのか?という疑問のひとつひとつに対する答えも、多くが彼ら自身の研究結果により用意されていることに驚かされた。
私は今回初めて知ったが、コルテリーニはイエテボリに留学の経験があるとのことだった。このことは彼の臨床アプローチに少なからず影響していると感じた。

2日目は彼のクリニックに赴き、3症例のライブオペを見学した。ここでの特長は何と言っても3Dの手術画像だった。骨欠損の形態や、フラップの厚み、肉芽組織の量、そして彼の手つきなど、一般的な手術動画では得られない臨場感と視覚情報の多さから、さまざまな有益な情報を得ることが出来た。参加した先生からは、事前に疑問に思っていた事柄のほとんどが、ライブオペの映像により解決したとの声も聞かれた。個人的な感想だが初日と2日目の印象は全く別もので、2日目は本当に貴重な経験をしたと考えている。
オペのまとめとして
1.切開線は歯根間距離よりSPPT/MPPTを選択し90°
2.骨欠損が根周囲の4分の3以下で、頬側から骨欠損のすべてにアクセス可能ならM-MIST
3.舌側に及んでおり、アクセス不可ならMIST
4.歯根周囲の4分の3に及んでいれば通常通り剥離する
5.縫合はInternal mattress suture でOff-set sutureを用いる

IFED 8th world congress報告
フィレンツェからミュンヘンへ移動し、IFEDに参加した。初日はPre-Congressが開催され、北島先生が講演された。5-Dコンセンサスの通り、天然歯の保存に努めながら、それが叶わない場合にインプラントを用い、それらは審美的であるように、様々なアプローチにより達成されていた。それぞれの症例の完成度の高さに、会場の参加者が目を見張っていたのが印象的だった。

Congressは、3日間のプログラムで歯科医師によるScientific programと、歯科技工士によるDental technologyに分かれて行なわれた。 ここではScientific programからの抜粋による報告となることをお許し頂きたい。このプログラムでは3日間で9つのセッションが行なわれ、各セッションは2名のモデレーターと2組のSpeakerにより構成され、speaker発表25分ずつと、Q&A30分が割り当てられた。

NATURAL vs. IMPLANT ABUTMENTS-HEROICS vs. EFFICIENCY
歯内治療の到達点と題してMartin Trope、インプラントの到達点としてRino Burkhardtが登壇した。Tropeは、研究結果を引用して現代の歯内治療の成功率を示し天然歯保存の到達点について述べた。彼はインプラントという言葉を使わずに「アンキロス・ユニット」と言い続けていたことも印象に残った。Burkhardtも臨床研究を背景に、成功率について示した後、審美エリアのインプラント治療に話題を移した。そこで自身の研究を基に縫合糸のテンションについて述べた。 セッション全体について私は、タイトルのような対立的なものはなく、落ち着いた印象を持った。

TREATMENT PLANNING SESSION
南アメリカチームとヨーロッパチームによる治療計画に関するセッション。南米はChristian Coachman,Marcelo Calamita,Adalberto de Paula 欧州はNitzan Bichacho, Eric van Dooren,Raffaele Spenaが登壇し、Murkus Hurzelerが症例を提供しそれに対する各チームが治療計画についてプレゼンテーションを行ない、Klaus Langが座長を務めた。
コンサバティブな欧州に対し、代名詞である「Smile Design」を軸にプレゼンをした南米チームだったが、Langが座長と思えぬほどの強い影響力を行使し、セッションは反南米の空気が漂うものとなった。個人的には南米チームは、臨床的、実際的なものでよく考えられてものに感じられたし、チームの特色を前面に打ち出し印象的なものだったと思う。

RELATIVE IMPACT OF SURGICAL TECHNIQUES AND BIOMATERIALS ON PERIODONTAL REGENERATION IN AESTHTIC AREAS
Pierpaolo CortelliniとLeonardo Trombelliによる歯周再生療法のセッション。 Cortelliniはフィレンツェで受講した内容に準じた内容。Trombelliは、自身のSFA(Single Flap Approach)がメインテーマだった。SAFとM-MISTに共通しているのは、片側のみフラップを剥離し対応する点だが、細かな点で異なることが多く見られた。前もってCortellini の考えを理解できていたので興味深く聴くことが出来た。

DIRECT vs. INDIRECT ESTHETIC RESTORATIONS
Claudio Pinhoによるダイレクトベニアと、Mauro Fradeaniによるインダイレクト・レストレーションのセッション。Pinhoは、理工学の見地も含めたダイレクトに関する発表で、審美的に優れたケースを多数提示していた。Fradeaniのメイントピックスは、彼が昨年PRDに発表したMIPPであった。

MANUAL vs. MACHINE-DRIVEN FABRICATION OF ESTHETIC RESTORATIONS
六人部慶彦先生が手作業で作り上げる審美補綴の最先端、Ariel J.RadigrodskiはCAD/CAMの最先端で発表されたセッション。六人部先生は、全くPCモニターも見ずに英語でプレゼンをされていた。周到な準備に裏付けられている良好な結果は、大きなスクリーンに映し出される彼の素晴らしい臨床例と、重ね合わせて見ることができた。

雑感
学会で2時間の講演を10回聴くよりも、たとえ一度でも直接赴き講義を受ける方が、得られる知識と刺激は全く別次元であると実感した。たしかにこのような研修に参加するのは、時間的、経済的、肉体的負担が大きい。しかしこれらの投資を上回るものが得られると感じた。
個人では決して得られなかったであろう貴重な経験をする機会に恵まれて、ともに研鑽を積む仲間の存在に感謝したい。また、出て行くことを許してくれる家族にも感謝したいと思った。